HOME > 九州地震支援 > 東日本大震災の経験を踏まえた大規模災害時におけるNPO等の活動と役割 ― Vol.2(乳幼児・妊産婦支援①)/まんまるママいわて

九州地震支援

いわて連携復興センターでは、4月16日に発生した九州地方を中心とする震災を受け、
日々支援活動に当たられている特に現地の支援団体の皆さまに向けて、
東日本大震災において復興支援活動に関わった岩手県内の団体より、
実際に支援活動を行った上での教訓やノウハウ等を寄稿いただき、今後本サイト上から発信してまいります。

なるべく現地の支援フェーズの移り変わりに合わせた内容を掲載してまいりますが、
いち早く配信し活用していただきたいと考え、
記事作成ができた順に掲載していきますので、何卒ご容赦ください。

第二弾は、緊急期、民間団体として主に『乳幼児・妊産婦支援』にあたった「まんまるママいわて」さんからの寄稿です。

【九州地震における現地で支援活動を行うNPO等の皆さんへ】はこちら
http://www.ifc.jp/news/notice/entry-1821.html

まんまるママいわてとは】

2011年東日本大震災をきっかけに立ち上がった、助産師とママをつなげる子育て支援事業をメインに活動している任意団体です。専門職の助産師と子育て当事者である女性自らが、岩手県内に住む女性たち(主に妊婦・乳幼児を育てている母親など)に対して、子育て支援事業を中心に行っています。
これまで現地のNPO団体と協力し、内陸や沿岸地域で妊婦、乳幼児をもつ母親を対象としたサロンを開催。
平成27年6月より『いわて助産師による復興支援「まんまる」』から「まんまるママいわて」に名称変更し、
活動しています。

…………………………………………………………………………………………………………………………………

当団体は、2011年9月に発足しました。東日本大震災の沿岸被災地を中心に、「助産師のいる子育てサロン」を実施しています。団体発足前は、岩手県花巻市における「被災妊産婦受け入れ事業」という内陸避難者の妊婦・乳幼児を連れた家族の受け入れ支援に関わりました。代表である私自身も5か月の赤ちゃんを抱え、震災を経験し、その後受け入れに関わり、団体を立ち上げ、その後5年間で気付いた支援のポイントをまとめました。

<発災から2週間>

東日本大震災時の状況

今後の支援のポイント

・妊婦・乳幼児を持つ家族が「災害弱者」であるという認識がほとんどなかったこと

・乳幼児を連れ、避難する場合には、両手が空く「おんぶ紐」が有効であった。何も使わない抱っこ等で乳児がながされるケースがあった。

・津波被災地では、一度避難したあとで、ミルク・おむつ等を取りに自宅に戻り、津波被害にあったケースがあった。

 

・津波被害があった被災地では、体育館等に避難した妊婦・乳幼児を連れた母親たちの多くが、1週間以内には大規模避難所からいなくなった(なき声・寒さ・感染症などの理由で違う場所に避難した)

・そのため、妊婦・母親・子供の所在をつかむのに苦労した自治体が多かった。

・「妊婦」が遠慮し、「妊娠している」と周りに告げないケースが多くあったので、「妊婦」というキーワードで探しにきた家族等とすれちがいが多くあった。

・「みんなが大変な時期」ということで家長が地域の物資配布場所に行くと、「ミルク」や「生理用品」等が必要でも、言わない(言えない)ケースもあった。家族一人が代表で物資をもらいに行くのでは、このような事態も起こる。

・学校避難所では、一つの教室を「赤ちゃん部屋」として管理した避難所や、老人・障がいのある方、赤ちゃん等を一緒に福祉避難所のような場所に管理した市町村もあった。

・「赤ちゃんが避難所で生まれた」「被災地で赤ちゃんのうぶ声が!」というニューㇲをマスコミが取り上げると、その人に集中し、最初は「家族に安否を知らせられる」と取材オーケーした方が、その後マスコミが押しかけ、まったく休息が取れなくなった。

・大規模災害時では、被災地の行政・医療関係者も被災している場合が多いので、県内外の支援団体からの「支援受け入れを始めているか?」「物資を送りたい」等の連絡で現地の支援者側が疲弊する場合もある。通常時に支援者側に回る行政・医療職員などは特にその役割を押し付けない。

・メール等で事実と異なる内容や悪質なチェーンメール等が出回り、母親たちの混乱を招いた。

・当団体では、代表佐藤の助産院に来ている母親たちのメーリングリスト(50名)が主な連絡ツールになり、おむつを売っている場所、沿岸へ物資を持っていく団体が必要としている物資の情報などが共有された。

 

・乳児を連れた避難には、「おんぶ紐」が有効。おんぶ紐がない場合は、リュックやさらし、一本の紐(着物帯等)で代用できる。

・スリングという抱っこ紐は、抱っこしながら授乳できるという便利さがある。

・授乳服という、着たまま授乳ができる洋服も有効。

・母乳栄養・ミルクと母乳の混合栄養の場合、災害のショックで一時的に母乳分泌が減る場合があるが、母乳分泌がなくなるわけではないので、吸わせることが大事。その場合は母親に少し多めに食料を分けると、それだけで赤ちゃんの飢餓は防げる。母乳を吸わせることで、安心感が増し、感染予防にもなる。

・ミルク育児の児の場合、優先的にミルクの配給をする。その場合、70度以上のお湯でミルクを作るようにする。清潔な哺乳瓶が維持できない場合(洗えない場合)紙コップ等にミルクを作り、すすらせるように飲ませることで感染予防になる。

・オムツが十分ない場合、大きめのおむつの中に、古布などを敷き、古布をこまめに交換する。入浴できない状況でも、なるべくでん部浴(おしりを洗う)ことで、おむつかぶれの予防になる。

・大規模災害では、被害の比較的少ない地域に早めに避難を進める(50キロ以上離れると、衣食住何とか確保できる状況になることが多い)

・妊娠は見た目で判断するのが難しい時期もあるので、必ず、申し出てもらうことを徹底する。医療チーム・保健チームに妊娠を伝えておく。(緊急時の大出血の可能性・流産・早産もあるため、妊娠初期でも必ず伝えておく)

・マスコミ等の対応を本人のみの判断に任せず、「断ってもよい」と伝えること。

・女性・子供は性被害にあいやすい。夜間の出歩き・トイレなどは複数で動くこと。

・体育館等の大規模避難所では、福祉避難所コーナーを設ける。そこに妊婦・乳幼児を連れた女性も入れること

・被災地から遠く離れた場所に住む人は、緊急時は物資を送らない(宅急便が届くころには、多くの企業・行政の物資などで生活必要品がほとんど届く)

・SNSのシェア等は、災害時、被災当事者が読み込める状況ではない(充電の問題・知人の安否等で忙しい)

・被災地以外でも、SNSの記事、テレビ等の報道を繰り返し、見ることでトラウマになる場合がある。特に母親たちは感情移入しやすい。子供が影響を受ける。テレビを消す、ネットを見ない、アニメを見る等、マスコミの情報からの自分を守るすべも伝える

寄稿:まんまるママいわて 代表 助産師 佐藤美代子 氏

※『震災から2週間~1か月』の記事は、後日掲載いたします。