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研修実施

いわて連携復興センターも共催しております第12回現地会議in岩手を
去る10月2日 盛岡市岩手県産業会館 大ホールにて開催しました。

当日の模様を以下、JCNより発言要約として公表になっておりますので
ご報告させていただきます。

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【第12回現地会議in岩手 発言要約】

「先を見通す~これから立ちはだかる壁~」というテーマを設定し、
見えにくくなってきている被災地の状況や課題について将来を見据えて
活動していくために、どう「先を見通す」べきか考えました。

40団体59名の参加をいただき、未来に向かって進むために、
過去から学び、今をみつめた現地会議となりました。

当日の模様をご報告させていただきます。
皆様のご参加・ご協力に心より感謝申し上げます。

※以下、発言骨子のみ記載しますが、後日動画記録を公開しますので、
ぜひご利用ください。

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■冒頭挨拶
NPO法人いわて連携復興センター 鹿野 順一(かの じゅんいち)
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JCNの現地会議in岩手も第12回目を迎えました。
今回は「先を見通す」というテーマ、「立ちはだかる壁」という副題ですが、
見通すということは、1つには被災地で生活している被災生活者が、2年先
、3年先、明日、明後日の、これから生活がどうなっていくのか、地域がど
うなっていくのだろうか、という見通しが見えないことが一番の課題ではな
いかと、現場で動いていて思っています。

かたや我々のように現地で活動するNPOがいつまで支援・サービスを提供し
ていくのだろうか、おそらく自分たちが提供するサービスを必要とされるま
では頑張ろうと考えているが、頑張るために必要な幾つかのリソースがどう
続いていくのだろうといった見通し、モーチベーションを保つために見通し
が必要になってくるんだろうと思います。

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■ご挨拶
岩手県復興局生活再建課 木戸口 豊武美氏(きどぐち とよぶみ)
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発災から4年と6か月が経過しました。本日お集まりの皆さまや県外各地、
全国のNPO等の皆さま、企業の皆さまからの温かいご支援ご協力に対しこの
場をお借りして改めてお礼を申し上げます。
岩手県においては平成26年から28年までの3年間、本格復興期間という位
置づけで県が実施する施策や事業を示した第2次実施計画を策定し本格復興
に取り込んでいくところです。

岩手県としては被災者一人ひとりが安心して生活を営むことができ将来にわ
たって持続可能な地域社会を構築することを目指し、県民、関係団体、企業
、NPO、市町村など、あらゆる主体と連携しながら復興の取り組みを推進して
いきたいと考えております。

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趣旨説明
■JCN岩手駐在員 中野 圭(なかの けい)
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今回第12回目の「先を見通す~これから立ちはだかる壁~」ということで
テーマを設定しました。震災以前から岩手には様々な社会課題がございまし
た。東日本大震災によってその課題が顕在化したと言われております。その
解決に挑むことがJCNを含め震災後に立ち上がった団体の大きなテーマに
なっていると思います。

そして、この社会課題の解決というのは誰も経験のない、そして極めて不確
実な未来の中でやっていかなければならない。そしてその不確実な未来の中
にもわずかな光があって、その光というものを具体的にイメージし、見えな
い未来というものを描き切る。そういった挑戦が今求められています。


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テーマ1
■東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター
定池 祐季 氏(さだいけ ゆき)
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今日の報告のメニューは、2つあり、奥尻島の復興プロセスのお話しと、
その後に有珠山の噴火の復興プロセスについてもお話ししたいと思います。

今回はわたくしから直接、壁/課題をお話しせず、皆さんのご関心の中か
ら引き出して頂けると助かります。

今日お集りの皆さまは支援に入られている方が多いと聞いていますが、や
はり地域ちいきの特性があると思いますのが、自分たちが思っていた常識
が通用しないなど、ちょっとしたコンフリクトがあったりとか、お互い見
ながら活動されていると思うのですが、奥尻島の状況を含め推し量って頂
けるとありがたいと思います。

東日本大震災の時も災害遺構を残しましょうという話がありましたが、私
も後悔していますが(住民からの声が出てくる前に)学者が焦り先走って
しまったのではないかと感じています。

2つの復興事例からまとめると、住宅の立地場所が早く決まると、住宅再
建の目途も立ちやすい。裏腹に、地域の在り方よりも自分たち個々の生活
再建に関心が向かってしまう。復興へ向かう忍耐の時間を逆手にとって、
専門家を巻き込んだり行政に働きかけをし将来の地域の在り方について議
論することも可能です。


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テーマ3
■出版社コモンズ代表、ジャーナリスト 
大江 正章 氏(おおえ ただあき)
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今日のぼくの話のキーワードは「内発的発展」「脱成長」「田園回帰」の3
つで、いずれも私の造語ではなく、内発的発展は80年代前半から言われ
てきた言葉であります。先ほど限界集落という言葉を使いましたが、しか
しながら僕は農山村で沢山の限界集落を訪ねておりますが、あまり限界だ
とは思いません。むしろずっと限界なのは都市の暮らしだと私は思います。
3,4年前にNHKは無縁社会というよいドキュメンタリーをつくり話題
になりましたが、本当に縁がない、あるいは僕の友人のジャーナリストは
絶縁だよと言いました。縁を断っていく、あるいは縁が絶たれていく、こ
ういう風な社会が都会では決して珍しくありません。

しかももうひとつ考えなくてはならないことは農水省のホームページを見
ていただくと、都道府県別の(食糧)自給率というものが載っています。
東京都1%、大阪府・神奈川県2%です。100%を超えているのは北海
道と東北の5県、宮城県は越えていません。東北地方はずっと食糧とエネ
ルギーと労働力の首都圏への供給地となってきたわけです。改めて確認し
ましょう。あの福島の原発は東北電力の原発ではない。東京電力の原発で
す。

今若者たちの思考がかなり急速に変化しています。私はもうじき59才で
すが、私たちの世代はいわばいい大学に出ていい会社に入って車を買って
家を建ててということがごく一般的な価値観でした。内閣府の世論調査に
よると、「あなたは農山漁村地域に定住してみたいという願望があります
か」という質問に対して願望がある、どちらかというとあると答えた人が
10年間で11ポイントも増えた。そういう思考を持った人が増えている
ということは非常に注目すべきことです。

僕は彼らを見ていておそらくこれからのキーワードの一つを考えました。
それは「生まれ故郷ではない田舎」ということです。別の言葉で言えばI
ターンということになるわけですが、自分の生まれたふるさとに戻るので
はなく、違うところの田舎に行って違う人生を送ろうという人たちがどん
どん増えています。これは決して悪いことではないと思っております。

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■閉会挨拶 JCN 田尻 佳史(たじり よしふみ) 
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外の人が入ることによって内発的な地元の住民の主体をどう引き出してい
くか、という仕掛けをとっていかないと。長年現場でやってこられた皆さ
んがその道筋をつくるということが、これから必要なんじゃないかなと思
います。

もう5年も経つと外部から入った人が定住化しています。その人たちも主
体だと思うのです。そういった主体がきちんと地域のことを考えて、自分
の役割を地域でつくっていけるような、多くの人が地域での自分の役割を
つくっていけるような地域づくり、まちづくり、復興につながっていけば
良いと今日のお話しを伺って改めて思いました。

是非これからも皆さんと一緒にやり抜いていければと思いますのでどうぞ
よろしくお願い申し上げます。