8月14日、大船渡市三陸町綾里地区で行われた夏祭りを支援しました。
約850世帯が暮らす綾里地区には、その年25歳となる「同窓生」たちが夏祭りの一切を運営する伝統があります。コロナ禍で中断していたこの伝統は、林野火災も乗り越え、101回目として復活しました。今回の同窓生は27歳から29歳の約10人で構成されました。地域に住む若者が力を合わせて準備し、当日は綾里を離れた同窓生も帰ってきて一緒に盛り上げる、という仕組みです。林野火災で家を失い、家族で仮設住宅に住む同窓生の女性は「地域を盛り上げるための夏祭り。私一人でもやります」と強い思いをもって臨んでいました。
林野火災の鎮火宣言が出された直後、綾里地区まちづくり委員会の村上芳春委員長は、「地域からまた人が居なくなってしまうことが一番の心配」と話されていました。例えば中心部の港地域は、100世帯ほどだった集落が東日本大震災で半減。林野火災でも13棟が焼失して最大の被害を受けました。半年が経過した現在、避難生活を送る13世帯のうち、地区に戻ることを決めた世帯は半数に満たないとのことです。
人が離れてしまうことはコミュニティにとって最大の痛手ですが、それぞれの事情があることは誰もが理解しています。そのような状況ながらも、伝統のバトンをつなぐことが地域を盛り上げ、愛着を育むと信じて行動する若者たちからはエネルギーが溢れていました。彼らを応援する「元同窓生」も多く、地区の将来は明るく感じます。しかし、当人たちに話を聞くと、少子化と若者の流出でこれまでのように一学年で祭りを運営するのは難しいとのことでした。特に祭り当日は絶対的に人手不足となる、とのことで、支援の要請を受けました。
私たちは、前のエントリーにも記したように、お祭りの準備段階から地域住民の「関わりしろ」を作る目的でベンチ作りを行ったほか、学生団体Youth for Ofunatoのボランティアをコーディネートして、「子ども縁日」の運営などを担いました。
晴天にも恵まれた今年の夏祭りは、主催者発表で2,000人の参加と大盛況。県内はもとより、東京近郊からも多くの綾里出身者・関係者が集まりました。地区のベテラン男性も「こんな人数は見たことがない」と興奮気味に話していました。運営は、伝統芸能の演舞・盆踊り・大抽選会などのプログラムに加え、飲食物の提供や交通整理など多岐にわたって多忙でしたが、当日帰郷した同窓生も加わって、充実感が溢れる笑顔を見せていたのが印象的でした。
終了直後、壇上に集まった同窓生の数は約20人。「綾里最高!」と叫びながらの記念撮影と、それを見守るまちづくり委員会の役員の姿は、綾里地区が復興の歩みを着実に進めていることの現われでした。
私たちは、夏祭りのような特別な行事のサポートに加え、中長期的視点をもってコミュニティ形成を通じた支援を継続します。
この活動は、社会福祉法人中央共同募金会「ボラサポ・令和7年大船渡火災 中長期助成事業」の一環として実施しました。